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絵本・元永定正の世界【もこもこもこ/口コミ】

絵本との出会いは出産後、学生のころ勉強していた美術史で元永定正に出会いました。

『もこもこもこ』谷川俊太郎 作 / 元永定正 絵 文研出版 発行年月 1977年 4月
    ISBN 978-4-580-81395-3   体裁 B4変型判 ・29ページ    NDC 913 / C8793



もこもこもこ (みるみる絵本) [ 谷川俊太郎 ]


『もこもこもこ』は出産祝いに

この絵本は「もこもこ」「ころころ」そんな言葉しか書かれていません。でも、子供には大うけ。「ギラギラ」で真剣な顔をして、「ぱく」できゃーって声をあげるほど、のめりこめる。そんな本です。

大人は戸惑いの方が多いようです。

絵本は出産祝いにプレゼントすることが多いんです。お返しいらないよっていうのを、受け止めてくれる、ちょうどいい価格帯。次男や三男が産まれた時に、あまりお知らせしていない場合でも、煩わしくなく、おめでとうの気持ちを伝えられます。

うちでは次男が産まれたときに、長男へと言って絵本をいただきました。次男ではなく、長男にと。長男が産まれた時も、たくさん絵本をいただきましたが、実は一番嬉しい絵本でした。出産であまり長男にかまってあげられなかったし、我慢することも多かっただろうし、一緒に頑張った仲間のような感じでした。でも、まだ2歳。長男に絵本をいただいて、ふと長男をみると、ニコニコ眩しい笑顔がありました。ああ、こんな小さかったんだ…次男の世話でイライラしちゃってたな…と反省して、ゆっくり時間を使って絵本を読みました。最高の時間でした。それからは、絵本のプレゼントは思想の押し付けのようで、遠慮していたんですが、率先してプレゼントするようにしています。小物と違って、本棚の隅っこに置いておいてもいいですし、子育ての理想に食い込んでくるものでもありません。

初めてのお子さんが産まれた場合のプレゼントはこの『もこもこもこ』にするようにしています。それほど、オススメの本。

だけど、子供は楽しそうに見てたけど、正直よくわからなかったと、感想を教えてくれる本でもあります。まず、もこもこ、にょきにょきってどう読んでいいかわからない。特に新米パパにとって、急に赤ちゃん言葉は恥ずかしいし、ちょっと、乗るに乗れない、そんな感じなんでしょうね。物語のように、何か教えがあるわけじゃないですし、高学歴なパパなんかは絵本にも意味を求めちゃう。いいのよいいのよ、そんなの、楽しければ。

そして、絵本の最後のページ、また繰り返されるでろうかと思わせる「もこ」で終わるんですよね。

繰り返し。

この世界感がほんとにグッときます。

抽象的な絵は、二度と同じものが起こらない、偶発的なものを想像させておきながら、繰り返される。自然の神秘に近いものをものを感じませんか?人間だって、同じ人は二度と現れないのに、人間は生と死を繰り返して子孫を繁栄させて生き続けている、そんな感じ。

元永定正ってだれ?

実は元永定正さんって、絵本作家だけではないんです。日本を代表する美術家でもあります。

Wikipediaに細かく記載されていますね(Wikipedia-元永定正)

関西を主軸に活動していた具体美術協会で活躍された美術家です。色んな美術館に所蔵されていますので、運が良ければ、鑑賞することが出来ると思います。独立行政法人国立美術館所蔵作品総合目録検索システムに掲載されています。リンク張っておきますね( 独立行政法人国立美術館所蔵作品総合目録検索システム -元永定正)。その他、関西の大学や、国立ではない美術館にいくつも所蔵されています。

1922年生まれの元永定正、なくなる2011年まで、精力的に活動されています。

その一つが戦後の前衛美術をひっぱった具体美術協会の活動です。私の感覚からすると、吉原治良や白髪一雄が馴染の?聞いたことあるメンバーかな?といったところでしょうか。

具体はその名の通り、抽象画がメインのスタイル。

元永定正の作品には、「かたち」「色」「リズム」が見て取れます。

元永定正の作品

元永定正の作品からみられる「かたち」「色」「リズム」 は、どうやって生まれてるんでしょう。

元永定正さんの「僕は知性派じゃなく、アホ派です」(引用サイト:ときの忘れ物-元永定正)という言葉は、この方を語るうえで、必ず登場する言葉です。

「アホ」ってなんでしょうね?関東の人がいう「バカ」ではないと思うんです。「アホ」には、愚かっていう意味じゃなくて、真っすぐでありのままを受け入れる愚直さのことなのかな?と想像しています。

ものごとの核の部分を愚直に追及した結果、抽象的なかたちやリズムを見つけてしまったのかなって。

リズムって、絵では一番表現しにくい分野。音楽ではありませんしね。だけど、『もこもこもこ』には、抽象的ななにかモコっとしたものが、大きくなったり口っぽいものが出てきたりと、絵本のストーリーとして、流れがあります。そのページをめくる度の変化が、うまくリズムとして表現されているな、そして、私がグッときた繰り返しにまでつながります。

永遠と続くリズム。

絵画でも、かたちにニョロニョロと足の生えたもの、大なり小なりの組み合わせ、動きは十分に感じることができます。

あとは、「かたち」に照らされた光かな…。

かたちに陰影がはっきりとついた作品、国立国際美術館に所蔵の『白いひかりがでているみたい』のように、奥行きというか、かたちから広がりが感じられるものがあります。初めて書いた抽象画が、六甲山の夜景にインスピレーションを得たものだとか…(参考サイト:三重県立美術館「元永定正-ユーモアと色かたちリズムの世界」)とあるように、風景のような自然なリズムをかたちに反映させたものかな…と想像させてくれるものです。

これらの、ものごとへの愚直なものへの追及、真っすぐな眼差し、元永定正の絵本をよむ子供たちは素直に感じ取っていると思います。子供も、きっと、そんな眼差しですもの!子供にとって、あらゆるものが初めてで、初めて学んでいくもので、全部、信じている。比較や批判なんてしないで、素直に受け止める子供にとって、素直な絵本って重要だと思うんです。

絵本に意味深かったり、戒めが込められていたり、それも大事だけど、素直な心が素直に読めて楽しめるそんな本、なかなかありません。

だからこそ、私は、初めてのお子さんの出産祝いのプレゼントにしています。赤ちゃんが明確な色をみて、ページをめくる度に動き出すかたちに、パパやママの発する「もこもこもこ」「にょき」「ぱく」にドキドキしながら、素直に見れる。

これは美術本です。

絵本としての良さを言ったけど、やっぱり、大人には価値が大事。

どうですか?元永定正が日本の前衛美術をけん引する美術家だと知って。

国立美術館に所蔵されるようなすごい(きっと、高額な)絵が、絵本の価格1430円で手に入るって知って。

高価な美術書に匹敵する本が、この価格で手に入るなんて。


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